「恋娘昔八丈」(こいむすめむかしはちじょう)解題

明治期草双紙(錦絵風摺付表紙)、和装板本、中本〈縦一七・五糎×横一一・六糎〉。上下二巻二冊 (各冊十八丁)。柳水亭種清省録、国松画。丸屋・小林鐵次郎(東京)。明治十四年頃刊。国文学研究資料館蔵(ナ四−四六九)

〈白子屋お熊〉として有名な密通事件が、享保十二年(一七二七)に大岡越前のお捌きで落着した。『近世江戸著聞集』や『伝奇作書』等に記されている〈実説〉に拠れば、死罪を申し渡されたお熊が引き回しになった時に黄八丈の着物を着ていたため、当時、黄八丈は忌まれて着る者がいなかったという。公儀を憚って江戸でこの事件を脚色した浄瑠璃が仕組まれ初演されたのは、四十八年後の安永四(一七七五)年の江戸外記座であった。「城木屋お駒」の夫殺しの顛末に萩原家のお家騒動を配して、お駒の才三に対する直向きな恋情を主題化したものである。これが大当たりし、翌安永五年三月には歌舞伎化され江戸中村座で上演された。その後〈城木屋お駒〉の世界は多くの影響作を生み出し、黙阿弥の『梅雨小袖昔八丈』(明治六年、中村座)に結実することになる。

本書は冒頭で安永五年初演時の「舞台本」の序を引きつつ「役者替名」を掲げているが、台帳でも残存していて参照したものであろうか。国会図書館に蔵する一本(〔絵本〕特四二・八〇八−四)は底本と同本で、巻末に「御届明治十三年十二月廿四日」「價六錢」とある。ただし底本上巻末の広告はなく下巻末と同一のものが附されている。柳水亭種清は明治十五年前後に多くの草双紙を手掛けているが、丸鉄(小林鐵次郎)から発刊したものが多いようだ。

【高木 元】 


# リプリント日本近代文学56『恋娘昔八丈』
# (二〇〇六年四月二十五日、国文学研究資料館発行、平凡社発売)
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