学術情報リポジトリと人文系基礎学
文学部 高木 元 

千葉大学附属図書館では、2002年3月の科学技術学術審議会による「学術情報の流通基盤の充実について」という提起を受けて、大学で生産される学術情報を国際社会や地域社会に向かって効果的に発信するため「学術情報リポジトリ」試作システムの設計開発に着手し、館内ワーキンググループを設置、教官を対象としたアンケート調査、学内の主な情報発信者を対象としたヒアリングを通じて、協力者グループの結成と情報提供の促進をし、正式公開の準備を進めてきた。

まず、リポジトリ(Repository)とは、生産された電子的な知的生産物(学術論文、学位論文、プレプリント、統計実験データ、教材などの学術情報)を蓄積保存し、学内外に発信するためのインターネット上の保存書庫システムのことである。具体的には、自分で研究成果を投稿すると、図書館員が書誌的なメタデータや管理情報等を付け加えてリポジトリに登録し、適当な検索画面から提供するというもの。とりわけ千葉大学の場合は、OAI-PMH(The Open Archives Initiative - Protocol for Metadata Harvesting)を実装し、国立情報学研究所(NII)のメタデータ・データベースに自動的に登録されるという全国に先駆けたシステム間連携を実現している。

さて、リポジトリの存在意義としては「1.研究成果の視認性と利便性の向上、2.社会に対する大学や学術機関の教育研究活動の説明責任を保証、3.学術情報資料の長期保存」の三点が挙げられているが、情報を提供する側からいえば、非排他的な無償の使用権をリポジトリに譲渡するということになる。勿論、著作権はまるごと作者自身に残るので、提供した著作物に関する使用制限はない。

人文系基礎学は、特許や著作財産権とは馴染みが薄く、論文の引用件数すら意味を持たない分野である。業績発表のプライオリティを確保する必要はあるが、研究成果を可能な限り広く公開し、一切の制限のない自由な使用を保証する必然性がある。Public domain(著作権消滅状態)に置いてしまいたいが、現状ではGFDL(GNU Free Documentation License / GNUフリー文書利用許諾)として公開するしかない。それは、蓄積と改訂こそが有意である情報だからであり、現在のみならず将来に渉って、多くの人に利用して欲しいと願うからである。極端にいえば、たとえ100年に1度しか繙かれない書籍であっても「そこに在る」ことが必要である図書館の基礎的蔵書に近似しているかもしれない。しかも、採算に見合わず、出版の機会を逸して書籍の形態を持っていない情報であっても webでの公開は可能であろう。

そこで、リポジトリである。書誌情報や概要等が付与されてプライオリティが確保され、固定的なurlに恒久的に置かれ、さらに国立情報学研究所「大学Webサイト資源検索」にも自動的に登録されるという点で、人文基礎学徒の儚い希望が適う理想のシステムといえるかもしれない。
なお、千葉大学学術情報リポジトリは、2004年4月から暫定運用を開始し、2005年4月からの正式運用を目指している。

(たかぎ げん・国文学) 


# 「学術情報リポジトリと人文系基礎学」
# (千葉大学附属図書館報 InfoPort No.7 2003.10)
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